脳が教える! 1つの習慣 / ロバート・マウラー
2010/02/14
これもネットで紹介されていて知った本。
脳科学に興味があるので、こういうタイトル(脳が教える!)とかつけられるとついつい読んでみたくなる。
この本のテーマは、「小さな一歩を実践する習慣」を身につければ人生変わるよ、ということ。
著者は人が変化起こすために用いる戦略を2つに分けて考える。
改善と革新は、人々が変化を起こすために用いる二大戦略である。
革新が衝撃的で過激な改革を求めるのに対し、改善が求めるのは、好ましい変化に向かって気楽に小さな一歩を踏み出し、それを習慣化することだけだ。(p34)
で、小さな一歩を踏み出して改善を習慣化すれば人生が変わると説く。
個人的には次のポイントが面白かった。
- 変化を起こすことが難しい理由を脳科学的なアプローチで解説
- 変化を起こすための、実行可能な方法を具体的に解説
なぜ変化を起こすことが難しいか
変化を起こすとき、脳の中では葛藤が起こっていて、それが原因で変化を実行することが難しいのだという。
登場人物は二人。
- 大脳新皮質
- 理性的な思考を司る部分。脳の進化の歴史からみると比較的歴史が浅い。
- 大脳辺縁系
- 感情を司る。危険に直面しても生き延びられるよう、闘争・逃走反応を支配する。
大脳新皮質が「変化」を起こさなきゃ!と思っても、大脳辺縁系がそれを止めちゃうんだそうな。
ダイエットとか、資格の勉強とか、やろうと思っても続かなかったことがある人。
沢山いるんじゃないかと思うのですが、今まで自分が変化を起こして来れなかったのは、自分の怠惰のせいじゃなくて、脳(大脳辺縁系)が停止信号を出していたからなんだ!自分悪くないじゃん!と思えるところに、この本の最大の価値がある。
この一言は、常に忘れずに。自分が本当に闘うべき相手は間違えないようにしたい。
脳は、新たな挑戦、チャンス、欲望によって、ある程度の恐怖心が起こるようにできている(p49)
そして、変化を受け入れる心構えとして、以下のポイントを解説している。
子供は、自分が抱いている感情をごく普通のものだと思っている。子供というのは、自分ではコントロールできない世界に生きていることをよく知っている。
親の機嫌がよくても悪くても、あるいは学校の先生が優しくても意地悪でも、それに対して何も言えない。恐怖は人生の一部だと、子供は理解している。
それに対して大人は、自分がまともに生きていれば、自分のまわりで起こる出来事はなんでもコントロールできると思っている。(p55)
恐怖は人生の一部だと理解すること。
ココがこの本の肝。当たり前すぎて誰も目を向けてこなかった事だけど、変化を起こすということは、同時に変化を受け入れる準備が脳にとって必要になるわけで、その際にこれがとても重要な考え方になると思う。
自分自身、「自分は何でこんなに(変なところで)安定的・保守的で、変化に強い恐れを抱くんだろう」ってずっと思ってたけど、この本を読んでその辺が自分の中でスッキリした。
変化を起こすための方法
具体的な方法についても、脳科学的なアプローチで解説してくれる。
ポイントは同じ質問を数日間あるいは数週間--どんなに長くてもかまわない--繰り返すこと。
情報を記憶する海馬は、同じ質問を繰り返されると、かならずそれに取り組むようになる。つまり、独自の方法、独自のスケジュールで、脳は答えを返してくれるのだ。(p76)
ふむ。自分に対して質問をし続ければ、海馬君がきっと動いてくれるのか。
これも、これまでいろいろ挑戦してきたのに失敗してきたのは自分の意志に依存していたからであって、海馬をうまく活用することで変化を起こすことができるんだと思えることが重要。
今まで自分が悪いと思ってきたのに、そうじゃないと言ってくれる。うまく責任転嫁をしてくれる。
やり方がまずいだけでうまくいかない例ってきっといくらでもあるからね。
具体的な質問の仕方についても言及されている。
気に入ったのは次のフレーズ。
「目標の達成に向かって私にできる小さな一歩はなんだろう?」
声に出して問いかけるにしろ、心の中で問いかけるにしろ、大切な友人に対するときのように自分自身にも優しい口調で話しかけてほしい。
興奮し、イライラしながらアプローチしても、創造的な答えを生み出す効果はない。(p90)
上記のフレーズに限らずですが、変化を起こすためには、数日間あるいは数週間、繰り返し同じ質問をするのが効果的だそう。
小さな思考を活用する
そうは言っても、なかなか一歩を実行できない。ということもよくある。
変化を起こすには、とにかく足を踏み出し、前へ進むことだと言われている。
(中略)
でも、これは果たして現実的な作戦だろうか?(p96)
海馬君に質問をしてみた。
してみたら、実行できた!ということもある。それはそれでいい。
どうしても実行に移せないという人に向けて、「マインド・スカルプチャー」という手法が紹介されている。
この辺りから話がNLPっぽくなってくるので、好き嫌いが分かれてくるかも。
僕は、話半分で読んで、使える内容が載ってたらいいなあくらいに思って読み進めた。
- マインドスカルプチャー
- 「見る」だけではなく、「聞く」、「味わう」、「においを嗅ぐ」、「触れる」などの行為を実際に行っていると思い込む。さらに自身の筋肉の動きや感情の起伏までイメージする。(p98)
- 脳はイメージしている行動と実際の行動との区別がつかない(p99)
- あらゆる感覚を使って、頭の中で数分間、なんらかの”訓練”をしていると、脳の化学反応に変化が見えはじめる。
だ、そうですので、試してみたい人はやってみるとよいかと。
何か変化を起こすとき、小さなことからはじめるというのは定石だけど、上記のマインドスカルプチャーの例のように、なかなか小さな一歩を実行できなかい人向けに、具体的な方法を親切に掘り下げて提案してくれているところが、この本の良いところ。
踏み出す一歩を最小化するという視点
本の中でいろいろと「変化を起こす小さな一歩」の具体例が書かれているけど、その中の一つが面白かった。
「もっと健康になるために、あなたにできる小さな一歩はなんですか?」
「食べる量を減らす」⇒×あいまい
「チョコレートを食べない」⇒×多少具体的だが、まだ大きすぎる(これが簡単なら、ダイエット業界はとっくにつぶれている)
「チョコレートを食べる量を減らす」⇒×惜しいが、まだダメ
「チョコレートは食べる、だが最初の一口は捨てる」⇒○脳が食べる前に一部を取り除くことを学んでいる(最後の一口を捨てるのは困難なので注意)
いろんなダイエット方法を聞いたことがあるけど、最初の一口は捨てるというアイデアは今まで聞いたことがなかった。けど、確かに小さい一歩だと思う。勇気はいるけど。
変化を起こすときは、小さい一歩にこだわる、という視点は何事にも応用できそうな気がする。いつも心がけていたい。
その他
心に残ったフレーズ。
「成功は短い時間をどう集めたかで決まる。
一つの勝利をつかむのに100万分使い、その後、その喜びを1000分味わう。
100万分が不幸だったら、どうして勝利を味わう1000分がすばらしい時間になろうか。それは無理な話・・・
人生は、小さな喜びでできている。朝食を食べながら、妻と視線をかわす一瞬。
友とふれあう一瞬。幸せはこんなちっぽけな成功からつくられる。
大きな成功なんて、めったに訪れない。
膨大な数のちっぽけな成功をすべて手に入れていないなら、大きな成功なんてなんの意味があろうか」
-ノーマン・レア、映画プロデューサー
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@remore is a software engineer, weekend contrabassist, and occasional public speaker. Read more