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人を伸ばす力―内発と自律のすすめ / エドワード・L. デシ, リチャード フラスト

2009/09/05

自立するとか、自律するってどういうことなのか、
ふと疑問に思って読んでみた本。

読むと、内発的動機づけって何なのか、
外的報酬に対して内発的動機はどう反応するのか、とかがわかる。
こう書いてもよくわからないと思うけど、
内容はめちゃくちゃ面白い。

最近はてぶでやる気に関する驚きの科学
という内容で、動機付けに関する記事がホットエントリになってたけど、
この内容をもっと掘り下げたような感じ。

動機付けについてノウハウ的な本を読み終わった人で、
更に次の段階へ進みたい人とかに特にオススメかも。
今年でベスト3に入る読書でした。

以下、まとまってないけど
印象に残った部分、覚えておきたい部分を
まとまりなくメモ。


・p12
 最も効果的な動機づけの与え方の問い方。
 正しい問いは、「他者をどのように動機づけるか」ではなく、
 「どのようにすれば他者が自らを動機づける条件を生み出せるか」

・p28
 内発的動機づけとは、活動それ自体に完全に没頭している心理的な状態であって、
 (金を稼ぐとか絵を完成させるというような)何かの目的に到達することとは無関係なのである。

・p45
 選択の機会を提供すること、それは広い意味で、人の自律性を支えるための主要な条件である。
 したがって、他者に対して権力をもつ立場にいる人は、
 どのようにしたらより多くの選択を提供できるかについて検討する必要がある。
 ・・・
 ポイントは、意味のある選択が自発性を育むという点にある。
 人は、自ら選択することによって自分自身の行為の根拠を十分に意味づけることができ、
 納得して活動に取り組むことができる。
 同時に、自由意志の感覚を感じることができ、疎外の感覚が減少する。

・p56
 (人の行動を動機づけるときに、)自律性を尊重することと行動を制限することは、
 どのようにすれば折り合いがつくのだろうか。
 人が制限の範囲内で生活すると同時に、自発性の感覚を保ちながら
 内発的動機づけを失わないようにするには、基準や規則をどのように用いればよいのだろうか。

・p69
 外的報酬を用いて統制を過度に用いることが、
 いかに内発的動機づけを低下させ成果の質を落とすかを考えるとき、
 その一方で、報酬や他の統制が動機づけを増す場合があることにも留意する必要がある。
 ・・
 動機づけの方法として報酬や統制を用いる際には、実際問題として、
 以下の点に十分留意する必要があある。
  - いったん報酬を使い出したら簡単に後戻りはできない
  - 人がいったん報酬に関心を向けると、報酬を獲得するための手っ取り早い最短のやり方を選ぶ

・p112
 われわれの研究が明らかにしてきたように、もし人が、
 統制が必要な受動的メカニズムや野蛮人であるかのように取り扱われていれば、
 ますますそのようにふるまうようになるだろう。
 ・・
 例えば、統制されていればいるほど、人はますます統制されないと何もできないようになる。

・p118
 ふだんの生活では、自分に対して正直でありたくないと思うときもあるだろうし、
 自分を偽って、実際は義務感や恐怖感から行動しているのに、
 ほんとうにそれがやりたいんだと言いはることもある。
 しかしそのときでさえ、人は何かおかしいとうすうす感じており、
 その変な感じが、自分をより深く見つめるためのきっかけとなりうるのである。

・p137
 自律性の支援とは、他者(子どもや生徒や従業員)を、
 自分自身の満足のために操作すべき対象と見るのではなく、
 人間として、支援する価値のある能動的なエージェントとして認めながら、
 かかわっていくことだということである。
 それは、彼らとかかわるとき彼らの立場に立ち、彼らの視点から世界を見るという意味である。

・p138
 自律性を支援しながら、課題の説明をする例では、
 課題のジッシについて合理的な理由を提示すること、感情を認めること、圧力を最小限にすること

・p142
 自己中心的で自己愛的で、あるいは反抗的になってしまった人々は、
 「他人を思いやる」ことはなく、無責任に行為するだろう。
 自律性や関係性に対する基本的欲求を満足させることに失敗したためである。

・p143
 自律性の支援が自由放任と同じでないことは、いくら強調しても強調しすぎることはない。

・p154
 何らかの社会的な単位-たとえば家族とか社会-の一員になることに伴う危険の一つは、
 ほんとうの自分というものをあきらめたり隠したりするように、強制される場合があることである。

・p157
 これまでの研究から、統制的文脈が発達を妨げるのは、それが統合を抑圧し、
 取り入れを助長するからであるということが、繰り返し明らかにされてきた。
 ・・・
 子供たちに適切な行動をとらせようとするあまり、親は愛情留保策を用いるのであるが、
 このプロセスは規範の内在化を妨げるだけでなく、もっと重要な自己の発達をも妨げてしまうのである。

・p164
 自分に失敗してもいいよと言いきかせなさい。
 そうすれば、あなたはもっと成功をおさめることができるだろう。
 これが、シャーロット・セルバーが言ったことであり、メル・ウィーリングがついに悟ったことでもある。

・p165
 真の自尊感情とは、自分はまちがったことを何一つしないとい考えることと同じではない。
 真の自尊感情を持つ人は、行動が正しいかまちがっているかを判断する感覚を持っている。
 真の自尊感情には統合された価値や規範がともなっているからである。
 彼らも自分の行動を評価する。
 だが、彼らの人間としての自己価値感は、そうした評価のうえには成り立っていないのである。

・p166
 ベストセラーの類には、高い自尊感情を絶賛するものが無数にあるが、
 それらは真の自尊感情と随伴的な自尊感情とを区別していないため、その効能は疑わしい。
 ベストセラーの著者たちは、親や教師や友人に、他者を賞賛してあげよう
 -どんなに良い人であるか本人に気づかせてあげよう-とアドバイスする。
 もちろん、その人が相手の価値を認めているということを相手に伝えるのはりっぱなことだが、
 相手をほめればそうしているということにはならない。
 実際、もしそのほめことばが随伴的に与えられれば、正反対の結果をもたらすかもしれないのである。

・p171
 成熟した関係の中では、それぞれのパートナーは、見返りを期待することなく、
 他者に恩義を感じさせることもなく、他者に与えることができる。
 与えることは真の自己から生じるため、自らすすんで与えたいという願望を経験する。

・p191
 統制という手段は、他者によって-つまり、上の立場に立つ人や社会によって-行使されることが多いが、
 自分が取り入れた規範を満足させるために、自分で自分を統制する場合もある。
 自分自身に圧力をかけたり、何らかの行動を自分自身に強制したり、
 あるいは何かをしなければならないと感じることによって、自律性は低下するのである。

・p192
 日本も、ソビエトとは違ってそれほど圧政的ではないが、
 統制的な集産主義形態の一つである。
 日本では、伝統的に集団は個人に優先するとされてきた。
 それはきわめて強力な社会的価値であり、日本文化の中ではほとんど普遍的といっていいほど、
 人々に共有されている。
 ・・・
 しかし日本においての統制という手段は、外からの強制にもとづいているというよりは、
 内在化を促進する、信じられないほどの効果的なプロセスである。
 その中で、人々は価値を身につけ、その価値を自分自身に対して厳格に適用しようとするのである。
 文化の担い手によって統制されるのではなく、文化における社会的慣習と調和しながら、
 自分自身を統制していこうとするのである。

・p261
 感情を手がかりに使うことで、自分に対して二つの重要な問いかけができる。
 第一に、私は何を得ていないのか。
 そして第二に、私はほんとうにそれが必要なのか。
 感情は現在の状態と、人がもっているある基準との食い違いのシグナルである。

・p262
 自律性や人生の経験を制限するもう一つの基準として、
 幸福になることが人生で欲しいもののすべてであるという信念があげられる。
 これはあいまいな表現で、おとぎばなしの結末に使われる言い方である。
 実際には、幸福はわれわれが思っているほどのものではないし、
 ほとんどの人はいつも心底幸福でいたいと思っているわけではない。
 ・・・
 人はさまざまな感情を求めている。
 望ましい感情とともに、望ましくない感情も。
 ・・・
 人にとって自然なことは何か、人が求めることは何か、
 人の発達を促進するものは何かを表すには、幸福というのは不適切な概念である。

・p264
 自律的であることは感情を十分に経験し、
 どのように表出するかについて選択できると感じることを意味するのである。

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